全脂環族ポリイミドフィルム化技術を確立(化学工業日報1ページ)
新日本理化は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイや薄膜太陽電池の基材として市場拡大が期待されている全脂環族ポリイミド(PI)をフィルム化する技術の確立に世界で初めて成功した。すでにサンプル供給を始めており、受注が決まれば来期中をめどに安定供給体制を構築する方向で検討に入っている。
PIは高分子の中で耐熱性が高く、物理的耐久性や電気絶縁性にも優れているため芳香族タイプを主力に回路の絶縁材料として多用されてきた。光学材料向けのフィルムはフッ素系PIが光導波路用基材として商品化されており、芳香族タイプより耐熱性は劣るが光透過特性に優れた脂環族タイプも、薄型テレビの急速な普及で需要増が見込まれるため、メーカー各社がフィルム化の研究を進めている。
脂環族PIには半脂環族と全脂環族の2種類があり、新日本理化によると、半脂環族タイプのフィルム化は一部のメーカーで完了している。しかし、半脂環族よりさらに広い波長領域で高い光透過率が得られ有機ELの基材として最適な全脂環族タイプは、品質と製造コストの両立を図るのが難しいことなどから、フィルムとしての工業化技術は確立できていない。新日本理化はPIワニスを量産しており、新に独自の水素化技術を投入するなどしてこの課題を解決したという。試作プラントは、新規事業である医薬中間体の拠点として再整備に着手し、研究所も併設している京都工場(京都市)が有力。量産プラントの候補地は現時点では流動的だが、シャープが世界最大規模の液晶パネル工場と薄膜太陽電池拠点の建設を決めた大阪・堺市の液晶コンビナートに隣接する新日本理化の堺工場などが予想される。同社は全脂環族PIの展開について、「有機EL以外にも薄膜系や有機系の太陽電池基材として幅広い分野で可能性を探っていきたい」としている。なお、試作フィルムは1月16日から東京ビッグサイトで始まる「プリント配線版EXPO」に出展する予定。